不動産取引
よくある相談の例
- 自宅を建てるため土地を購入して工事をしたら埋設物が見つかった。土地の売買契約を解除できるか。
- 自宅の新築工事を依頼したが,完成後に欠陥が見つかった。直してもらえるか。
- 家のリフォームをしてもらっている間,引っ越していたが,工事完成が遅れたため,引っ越し先での費用が余計にかかった。これを請求できるか。
- 不動産の売買契約に先立ち,売主に手付けを支払っていたが,売主から契約解除されてしまった。手付けを戻してもらえるか。
Q&A
契約不適合責任(従前の「瑕疵担保責任」)とはどのようなものか。
売買契約に基づき引き渡された目的物(購入した土地など)に,契約内容と適合しないところがある場合には,買主は修補や代替物の引渡し,履行の追完(不足分の引渡し)を請求することができます(民法562条1項)。
また,買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告したのに,その期間内に売主が履行の追完をしないときには,買主は代金の減額請求や契約の解除ができます(民法563条1項,541条本文)。さらに,履行の追完が不能であるときや,売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどには,催告をすることなく代金の減額請求や解除をすることができます(民法563条2項,民法542条)。
解除に関して,改正前の民法では,契約の目的を達成することができないことが解除の要件とされていましたが,改正法においては要件ではなくなりました。もっとも,債務不履行(契約不適合)が社会通念上軽微である場合には解除ができないとされていますので(民法541条ただし書),追完がされない場合に必ず解除が認められるものではありません。
担保責任を追及できるのはいつまでか。
売買契約で引き渡された目的物が種類や品質に関して契約内容と適合しない場合には,買主は不適合を知った時から1年以内に不適合があることを売主に通知しなければ,追完請求や代金減額請求,損害賠償請求,解除をすることができません(民法566条)。この点,改正前の民法では,瑕疵を知った時から1年以内に解除や損害賠償請求等を行わなければならないという規定になっていましたが,改正法により,1年以内に不適合の存在を通知すれば,その後に損害賠償請求や解除等ができるようになっています。
なお,追完請求権,代金減額請求権,損害賠償請求権や解除権は,上記の期間制限(「除斥期間」といいます。)とは別に消滅時効の規定の適用を受けます。そして,その消滅時効は目的物の引渡しを受けた時から進行するとされています。そのため,不適合を知った時から5年間権利行使しないときや,引渡しから10年間権利行使しないときには,これらの権利が消滅します(民法166条1項1号,2号)。
手付が払われている場合,どのようにすれば解除が認められるのか。
不動産売買においては,手付が交付されることが少なくありません。
民法では,買主が売主に手付を交付したときには,当事者間で特に合意をしなくても,買主は手付を放棄する(手付の返還を求めない)ことで,また売主は手付の倍額を現実に提供することで,(相手方に債務不履行などがなくても)契約を解除することができるとされています(民法557条本文)。
ただし,相手方が契約の履行に着手した後には,手付の放棄または倍額の提供によって契約を解除することはできなくなります(同条ただし書)。
この「履行に着手」したといえるのはどのような場合かについて,判例は「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし,又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」をいうとしていますが,その判断は難しいところがあります。
そこで,不動産売買契約においては,売主と買主の合意の元で,手付解除期日(手付解除ができる期限)を設けることが多いようです。この場合には,この手付解除期日までであれば,買主は手付を放棄し,売主は手付の倍額を提供することによって解除ができることになります。
請負人の担保責任はどのようなものか。
請負人も,売買契約の売主と同様,不完全な履行をした場合には,追完や報酬(代金)減額,解除,損害賠償の請求を受けます。
民法改正前は,請負人の担保責任として,売買契約とは独自の規定が置かれていましたが,民法改正により売買の契約不適合責任の規定がそのまま準用されることになり,整理されました。
たとえば,改正前は,瑕疵が重要な場合には修補に過分の費用を要する場合でも請負人は修補義務を免れないとされていましたが,この規定は削除されました。修補(追完)請求については売買の562条が準用されますので,請負人は注文者に不相当な負担を課するものでないときには,注文者の請求した方法と異なる方法で追完をすることができることになります。
また,民法改正により,担保責任を追及することができる期間も変更されました。これについても売買の場合と基本的に同様で,注文者が契約不適合を知った時から1年以内に通知をすれば,1年以内に請求までをしなくても,追完や減額,解除,損害賠償の請求ができることになりました(民法637条2項)。