刑事事件
よくある相談の例
- 父が逮捕されてしまった。今後どうなるか知りたい。
- 息子が交際相手を殴ってしまった。示談すれば裁判にはならないのか。
- 身柄拘束されてしまった家族が家に帰れるようにしてほしい。
- 前にも刑事裁判を受けたことがあるが,刑務所にいかないようにできることはないか。
- 未成年の子どもが万引きをしてしまった。大人と同じように裁判を受けるのか。
Q&A
家族が逮捕されてしまった。今後はどうなるのか?
警察により逮捕されると,48時間以内に検察官のもとに送られ,検察官は,24時間以内に裁判所に勾留を請求し,裁判官が,勾留するかどうかの判断をします。つまり,警察により逮捕された場合の身柄拘束の時間は,最大で72時間ということになります。
勾留されると,原則として10日,裁判官が延長を認めれば更に10日,身柄拘束されることになります。ただし,逮捕されると必ず勾留されるのではなく,いずれかの段階で釈放されることもあります。
起訴されるかどうかは,上記の期間等の捜査の結果を踏まえて,検察官が決めます。仮に起訴された場合には,引き続き,身柄拘束をされることが多いのですが,保釈が認められることもあります。
逮捕と勾留(被疑者勾留)は何が違うのか?
起訴前,つまり,捜査段階に被疑者を身柄拘束する処分には,逮捕と勾留(ここでは被疑者の勾留をいいます。)の2種類があります。法律上,必ず逮捕が先に行われることになっており,また,逮捕と勾留とではその期間・場所が異なります。
逮捕は,通常は警察によって,被疑者として身柄を拘束される手続であり,その期間は48時間以内で,身柄拘束の場所は,通常,警察内の施設です。
勾留は,逮捕後に引き続き身柄を拘束することをいい,その期間は10日間(裁判所が延長を認めた場合には更に10日間)で,身柄拘束の場所は,通常,警察内の施設です。
勾留から身柄を解放してもらう手段はあるか?
裁判官がした勾留の裁判に対する不服申立ての手続として,準抗告があります。
また,病気治療や家族の死亡等の場合に一時的に釈放してほしいという場合には,勾留の執行停止を求めるができます。
勾留されている家族に面会に行こうとしたら接見禁止となっていて会えないと言われたが,接見禁止とは何か?
家族等は,通常,勾留されている被疑者と面会したり,手紙をやりとりしたりすることができますが,証拠隠滅をする疑いがある場合には,裁判官の判断により,面会や手紙のやりとりを禁止される場合があります。これを,接見禁止といいます。
なお,接見禁止決定が出ている場合でも,弁護人や弁護人になろうとする者は,被疑者と接見をすることができます。
送検(検察官送致)とは何か?
送検とは,警察が,被疑者を逮捕している場合にはその身柄と捜査記録を,在宅事件の場合には捜査記録を,検察官に送る手続です。
警察は,原則として,捜査をした事件の全てを検察官に送らなければならず,その後,起訴されるかどうかは検察官が決めますし,有罪かどうかは裁判官が決めますので,送検されたからといって,有罪になると決まったわけではありません。
弁護人はどのような活動をしてくれるのか,私選弁護人と国選弁護人の違いは何か?
弁護人とは,被疑者・被告人の正当な利益を擁護するため,被疑者・被告人の刑事事件に関する相談や疑問点に応え,被疑者・被告人の権利を説明し,被疑者・被告人に有利な証拠の収集や示談交渉等を行います。
選任の方式には,被疑者や被告人自身あるいはその親族等が選任する場合(私選)と,貧困その他の理由で弁護人が選任できないときなどに裁判所が選任する場合(国選)とがありますが,国選弁護人も私選弁護人も,弁護人の活動内容は基本的に異なるところはありません。
なお,国選弁護人の報酬は日本司法支援センターから支給されることになりますが,有罪判決の場合には,被告人が訴訟費用としてその負担を命じられることがあります。
当番弁護士とは何か?
茨城県弁護士会には,逮捕・勾留された被疑者が,警察官や検察官に「当番弁護士を呼んでほしい。」と申し出た場合,原則として48時間以内に,待機していた弁護士が,1回に限り,無料で警察署などに駆けつけて接見(面会)をし,相談や疑問に応える当番弁護士制度があります。
もし,面会に来た弁護士を私選弁護人として依頼したい場合には,改めて委任契約(有料)を結ぶことになりますので,面会に来た弁護士と相談してください。
被疑者国選弁護人と当番弁護士との違いは,次のとおりです。被疑者国選弁護人は,被疑者が勾留されている一定の事件について,被疑者の現金,預金等の資産の合計額が50万円を超えない場合に(50万円を超える資産がある場合にも,一定の場合には,国選弁護人が選任されます。),選任されます。
これに対し,当番弁護士は,勾留される前の逮捕直後から警察官や検察官に申し出ることができ,対象事件や資産状況に限定はありませんが,接見(面会)は1回に限られ,その後,その弁護士を私選弁護人として依頼する場合には,改めて委任契約(有料)を結ぶことになります。
逮捕直後に弁護士に相談したいことがある場合,被疑者国選弁護制度の対象事件ではない場合などには,警察官や検察官に「当番弁護士を呼んでほしい。」と申し出てください。
起訴とは何か?
起訴とは,検察官が,特定の刑事事件につき裁判所に裁判を求めることをいいます。 起訴するかどうかは,検察官が,警察・検察官による捜査を踏まえて,被疑者が罪を犯したとの疑いが十分にあるかどうかや,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状,犯罪後の情況(反省の有無・示談の成否等)などに照らして,起訴をするかどうかの判断をします。
起訴には,公開の法廷での裁判手続を求める公判請求と,法廷での裁判を開かずに罰金・科料の処分とすることを求める略式請求があります。
起訴された後も身柄拘束が続くのか?
捜査段階で逮捕・勾留されていた被告人が起訴された場合,起訴後も引き続き被告人として身柄を拘束されることが多いです。起訴後の勾留の期間は,2か月間で,その後,1か月ずつ更新されることがあります。また,起訴後,身柄拘束の場所が,警察内の施設から,拘置所と呼ばれる施設に移ることがあります。
また,起訴後は,保釈を請求することができ,保釈が認められた場合には,被告人の身柄が釈放されます。
保釈とは何か?
保釈とは,保釈保証金の納付を条件として,被告人の身柄を釈放し,もし,被告人が裁判所の呼出しに応じなかった場合,裁判中に逃亡した場合,証拠を隠滅した場合等には,再びその身柄を拘束するとともに,納められた保証金を取り上げること(没取)ができる制度です。
保釈の請求は,起訴後であれば,公判が始まる前でも後でも,判決が確定するまではいつでもすることができます(起訴前に保釈はできません)。
保証金の額は,裁判所が,犯罪の性質及び情状,証拠の証明力,被告人の性格及び資産等の一切の事情を考慮して決めます。なお,保証金は,保釈を取り消されて没取されることがなければ,裁判が終わった後には,その結果が無罪でも有罪でも,納めた人に返還されます。
略式手続とは何か?
略式手続とは,検察官から請求があり被疑者に異議がない場合に,簡易裁判所が,原則として検察官の提出した資料のみに基づいて,公判を開かずに,略式命令により罰金又は科料を科す手続です。
執行猶予とは何か?
執行猶予が付いていない場合,例えば,「被告人を懲役1年に処する。」という判決が言い渡され,確定した場合には,被告人は,直ちに,刑務所に入ることになります。
これに対し,執行猶予が付いている場合,例えば,「被告人を懲役1年に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。」という判決が言い渡され,確定したとしても,被告人は,直ちに刑務所に入るわけではありません。
仮に3年の期間内に,再び罪を犯した場合には,執行猶予が取り消され,新たに犯した罪の刑に加えて,上記の1年の刑を執行されることになりますが,執行猶予が取り消されることなく3年の期間を経過した場合には,刑の言渡しそのものが効力を失い,将来まったくその刑の執行を受けることがなくなります。
執行猶予は,全ての刑事裁判で付くものではなく,法律上,執行猶予を付けることができない場合もありますし,執行猶予を付けることができる場合であっても,事案によっては,執行猶予が付かない場合があります。
執行猶予付きの判決の場合,保護観察に付して,猶予の期間中,保護観察所の保護観察官や保護司の指導を受けるようにすることもあります。
なお,平成28年6月1日から施行された改正刑法及び薬物犯の特別法では,「刑の一部執行猶予」が認められています。刑の一部執行猶予とは,たとえば懲役2年の刑のうち6か月を,刑務所に服役することではなく,保護観察所の再犯防止プログラムを2年間受けることによって代替する,というような制度です。これにより刑務所に服役する期間自体は短くなり,再犯防止のための専門的な処遇を受けることができます。
保護観察とは何か?
保護観察とは,犯罪をした人や非行少年が,社会の中でその健全な一員として更生するように,国の責任において指導監督及び補導援護を行うものです。
保護観察にはいくつかの種類がありますが,刑事裁判では,執行猶予付きの判決にする場合に,同時に,保護観察に付して,猶予の期間中,保護観察所の保護観察官や保護司の指導を受けるようにすることがあります。
未成年の子が逮捕された。今後どうなるのか?
逮捕後,引き続き被疑者勾留されることがあり得ることについては,刑事処分の場合と同様です。
成人の刑事事件の場合には検察官が起訴をすると地方裁判所(又は簡易裁判所)で公判手続が行われることになりますが,少年事件の場合には,家庭裁判所に事件が送致され,以後,家庭裁判所で手続が行われることになります。
家庭裁判所に事件が送致されると,観護措置手続がとられることがあり,その場合には,原則として4週間以内の期間,少年鑑別所に入所することになります。
その後,家庭裁判所調査官による調査が行われ,多くの場合,上記の4週間の期間内に,少年審判が行われます。
未成年の子が警察署で取調べを受け,逮捕されなかったが,その後どうなるのか?
成人の刑事事件の場合には検察官が起訴をすると地方裁判所(又は簡易裁判所)で公判手続が行われることになりますが,少年事件の場合には,家庭裁判所に事件が送致され,以後,家庭裁判所で手続が行われることになります。
家庭裁判所に事件が送致された後の手続は,事案によって大きく異なります。多くの場合,家庭裁判所調査官による調査を経て,審判が行われますが,審判に付されないで手続が終わることもあります(審判不開始)。
観護措置とは何か?
観護措置は,家庭裁判所が調査・審判を行うために,少年の身柄を保全する必要がある場合(逃亡のおそれがあるときなど),緊急保護の必要がある場合(薬物濫用によって中毒症状を呈しているとき,家族から虐待を受けているときなど),心身の鑑別をする必要がある場合(処遇選択のため行動観察をする必要があるとき)にとられる措置で,観護措置がとられると,多くの場合,少年鑑別所に送致されます。
観護措置の期間は,2週間で,更に2週間延長される場合があります(なお,一定の重大事件の場合で,多数の証人の尋問を行う必要があるような場合には,最大で8週間まで延長されることがあります)。
付添人(弁護士)はどのような活動をしてくれるのか?
付添人は,少年の正当な利益を擁護し,適正な審判・処遇決定のために活動する者で,多くの場合,弁護士がなります。
付添人は,非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう,少年の立場から審判手続に関与し,また,家庭や学校・職場等少年を取り巻く環境の調整を行い,1人でも多くの少年が更生できるよう支援する活動を行います。
未成年の子が少年審判を受けることになったが,どのような手続を受けるのか?
審判では,裁判官によって,非行事実に関する審理,要保護性に関する審理が行われます。非行事実に関する審理とは,非行事実が証拠上認められるかどうかを,証人尋問等により審理することをいいます。
要保護性に関する審理とは,少年の家庭・学校・職場等の環境,少年の生い立ち,非行の動機・原因,少年の性格や行動傾向等を少年や保護者に確認して審理することをいいます。
審判が開始された少年に対する最終的な処分としては,不処分(証拠上非行事実が認められないときや,裁判官・調査官等の教育的働きかけなどによって要保護性が解消したときなど),保護観察(社会の中でその健全な一員として更生するように,保護観察所が指導監督と補導援護を行うこと),少年院送致,児童自立支援施設等送致,検察官送致(一定の重大事件であって,刑事処分が相当であると家庭裁判所が判断した場合,事件は成人の刑事裁判と同様の手続へと移行します。)のいずれかが言い渡されます。
これらの最終的な決定がされる前に,中間処分として,試験観察に付されることもあります。
試験観察とは何か?
家庭裁判所は,直ちに少年に対する最終的な処分(例えば少年院に送致するか,保護観察にするか)を決定するのではなく,最終的な処分の決定を留保して,一定の期間,家庭裁判所調査官の試験観察に付することができます。
この場合,家庭裁判所調査官が,定期的に少年や保護者と面接を行ったり,作文・日記等を提出させたりして,少年の行動を観察し,少年が立ち直ることが期待できる状態になっているかなどの確認をします。
また,試験観察に際し,通所で通える社会福祉施設や,住み込みで働ける職場などに委託して行う補導委託という制度が利用されることもあります。
試験観察はあくまで中間的な処分であり,最終的な処分,例えば少年院に送致するかどうかは,試験観察の結果をふまえて,裁判官が,決定することになります。
より詳しい情報については,以下のサイトへ